「俗塵を離れ身を仏境に置く 塵ひとつない汚れない”表”の湯」が旅館名の由来。伊藤博文の娘婿で、法律学者であった末松謙澄が来館したときに命名したという。以来、多くの文人墨客に愛されてきた伝統の宿。夏目漱石や川端康成が滞在中に書き残した直筆の書画を、展示館「円実」で見学できるようにもなっている。

なんといっても気取らない家庭的なサービスがうれしい宿だ。宿に備えられたアメニティグッズを使わず持参したものを使うと、帰りに還元サービスとして地元の特産品の本しめじをお土産にくれたりする。また、庭園露天風呂は混浴だが、女性客には女将手作りの湯浴み着が用意されている。

夕食の「千駄の膳」はこの宿の雰囲気そのもの。絵入りで説明される献立表を楽しみながら、リンゴで肥育された信州牛のスキヤキを豪快にぱくつく。一緒に煮込むしめじ・まいたけ・えのき類は、親類の農家から仕入れたという地物ばかり。室に保存さている大根を掘り出し、鮭の粕煮に仕立てた一品も忘れがたい味だ。

足袋の無料提供、就寝まぎわに届けられるほかほかに温められた浴衣。さりげなさのなかに本物の心遣いが感じられる。
上林温泉 塵表閣本店
売夏亭が半露天風呂付きになってリニューアルオープン!落ち着いた離れの客室と女将のてづくり創作料理が自慢。客室は明治から平成まで時代時代の趣きを表現しています。温泉は本物の源泉100%掛け流し。